気になる脂肪を取り除いてしまいたい。
そのように考えたとき、美容医療としての選択肢は「脂肪吸引」か「脂肪溶解注射」があげられます。
同じ結果へ導く2つのアプローチから、今回は「脂肪溶解注射」をピックアップし、脂肪溶解注射とはどのような施術なのか、メリットやデメリット、脂肪吸引との違いなどを詳しく解説していきます。
脂肪溶解注射とは
脂肪溶解注射(しぼうようかいちゅうしゃ)とは、脂肪を減らしたいと希望する場所に、脂肪細胞を溶かす薬剤を注射する脂肪除去施術です。
脂肪溶解成分が入った薬剤を注入することで脂肪細胞を溶解(破壊)できるだけでなく、肌を引き締める効果が得られたり脂肪燃焼効果が得られたりするとも言われています。
同じ脂肪除去施術である脂肪吸引よりもダウンタイムが軽いことなどから、手軽に受けられる施術として注目を集めているようです。
肪溶解注射の主な注入部位
脂肪溶解注射は体のほとんどの部位で可能です。
しかし、脂肪溶解注射の性質上、太ももやお腹といった広範囲になる場所は効果が感じられにくくなります。
その性質を逆手に取り、脂肪を減らしたい部位をピンポイントに狙える、部分痩せ効果が高い脂肪除去施術だと言われています。
脂肪溶解注射の威力が発揮しやすい主な部位は顔。
フェイスラインや顎下、小鼻や鼻先、頬や頬骨上といった顔の細かな部位への施術が可能です。
一部では脂肪溶解注射のことを「小顔注射」とまで言われることもあるほど、顔への施術が多い施術です。
脂肪溶解注射の主な成分
脂肪溶解注射の主な成分で一般的な薬剤は、天然ハーブから抽出された成分がメインの脂肪溶解効果がある「デオキシコール酸」です。
他には、血流やリンパの流れをよくすることで脂肪分解や排出効果を促せる「アーティチョーク」。
デオキシコール酸などの、脂肪細胞を直接破壊する成分と組み合わされることで高い脂肪除去効果が期待できる「Lカルニチン」。厚生労働省から認可を受けている「BNLSアルティメット」にアメリカFDAで認可を得ている「カベリン」などが含まれます。
これらの成分は施術をするクリニックや、理想のボディラインを手に入れるために期待する効果がどのようなものかなどによって、異なる成分の薬剤が使用されるようです。
脂肪溶解注射の効果的な注入量・注入回数
脂肪溶解注射の効果的な注入量や注入回数は、施術を希望する部位によって変動します。
まずは主な部位別で必要となる脂肪溶解注射の注入量の目安を紹介しましょう。
部位 | 脂肪溶解注射の注入量 |
---|---|
フェイスライン | 10〜20cc |
顎下 | 20〜40cc |
小鼻 | 2〜6cc |
頬 | 10〜20cc |
頬骨上 | 10〜20cc |
脂肪溶解注射を顔に注入する場合の1回の注入量は、1〜5ccが目安です。
つまりフェイスラインの場合は間隔を空けて5回程度行うこととなります。
1回の脂肪溶解注射では効果を感じられないケースが多いため、繰り返して注入し効果を得るのです。
脂肪溶解注射にかかる費用の相場
脂肪溶解注射は大変高額な美容施術です。
クリニックの価格表などを見ると「1本1ccあたり〇〇円」などと表記されているため安価に感じるかもしれません。
しかし1回の施術、希望する結果にたどり着くために必要な薬剤の量を考えると、最終的に高額になることも理解できるでしょう。
しかも脂肪溶解注射を1回注入しただけでは効果を感じられにくく、繰り返し注入しますのでその分加算されていきます。
なお、脂肪溶解注射施術で使用する薬剤やクリニックによって、発生する費用には幅が発生します。
1ccあたり約3,000〜10,000円が料金の目安です。
繰り返しお話しているように、脂肪溶解注射は希望する効果を得るためには複数回の注入が必要です。
1回の価格だけで判断せず、必ずカウンセリングで最終的な費用を確認しておきましょう。
脂肪溶解注射と脂肪吸引の比較
気になっている部位の脂肪を除去するという意味で比較されがちな「脂肪溶解注射」と「脂肪吸引」ですが、この2つにはどのような違いがあるのでしょう。
比較検討する判断材料として、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
脂肪溶解注射のメリット
脂肪溶解注射における最大のメリットは、ダウンタイムを少なくできる可能性が高いことです。
脂肪溶解注射は薬剤を注入することで効果を得る施術なため、メスで体に傷をつけることがありません。
そのため、体への負荷や負担が少なくなり、脂肪吸引と比べるとダウンタイムが大幅に抑えられます。
ほとんどのクリニックで、脂肪溶解注射の施術後すぐからメイクが可能だと紹介するほど、日常生活にすぐ復帰可能です。
このように体への負担が小さいことから気軽に受けられる点もメリットになります。
多くの脂肪を取り除く必要がない人には大変効果的な施術だと言えるでしょう。
脂肪溶解注射のデメリット
気になる脂肪を除去するとなると、太ももやお腹といった広範囲を希望する方が多くなります。
そのような広範囲の脂肪除去を目的とする場合、脂肪溶解注射では効果が感じられにくいため、狭い範囲の顔などの細かな部位への施術が推奨されるのです。
脂肪吸引とは違い、複数回の施術が必要な点もデメリットになるでしょう。
脂肪溶解注射を施術する場合、1〜2週間ごとに3〜6回行うことで効果を感じやすくなります。
しかしその結果、薬剤の使用量が増え、最終的な費用が脂肪吸引と大差なくなってしまうケースも。
さらには、得られる効果も個人差が大きいことから、時間もお金もかかりすぎてしまう可能性も出てくるようです。
脂肪吸引のメリット
脂肪吸引の最大のメリットは即効性が高いことです。
複数回の施術が必要となる脂肪溶解注射とは異なり、基本的に1度で効果が十分に実感できます。
脂肪吸引では、根本的に脂肪細胞そのものを取り除いてしまうため、リバウンドが起こることがほとんどないことも魅力だと言えるでしょう。
脂肪吸引のデメリット
脂肪吸引における最大のデメリットは、費用が高額になることと重いダウンタイムがあることです。
費用に関しては、脂肪溶解注射で使用する薬剤の量・種類などによって料金がどんどん加算され、最終的には脂肪吸引の費用と大差なくなってしまうケースもあります。
施術後からメイクが可能であったり、体に傷や負荷をかけないため回復が早かったりする脂肪溶解注射と比較すると、脂肪吸引のダウンタイムは大変重く、回復に長い時間を要します。
脂肪吸引におけるダウンタイムの症状は約3~6か月程度。
症状には痛みや内出血、むくみや硬縮・かゆみなどがあげられます。
ピークは1週間程度と言われていますが、個人差が大きく、数日で収まる人もいれば長引く人もいるようです。
脂肪溶解注射と脂肪吸引どちらがいい?
脂肪溶解注射と脂肪吸引のメリット・デメリットを比較したとき、ダウンタイムの問題や費用の問題で脂肪溶解注射を選択しがちです。
しかしこの2つの要素だけで安易にどちらかを決めてしまうことは危険かもしれません。
まずはクリニックが公開している症例をしっかり見比べ、どちらの効果が高いのかをしっかりと見極めてください。
その上でそれぞれのメリット・デメリットを比較すればいいでしょう。
結論から言うと、脂肪溶解注射と脂肪吸引のどちらを選ぶか迷った場合は、脂肪吸引がおすすめではないかと考えます。
理由は、脂肪溶解注射よりも最終的に安くなるケースがあることや、1度でしっかりとした効果が感じられる脂肪吸引のほうが予定を立てやすい上に、時間や労力を費やさずに済むからです。
このような点から、脂肪溶解注射と脂肪吸引のどちらかを選ぶとすれば、脂肪吸引がおすすめではないかと考えます。
まとめ
脂肪細胞を溶かす薬剤を注射で注入することで、気になる部位の脂肪を減らせる脂肪溶解注射について紹介しました。
総合的に見ると、脂肪吸引のほうがメリットが大きいため、この記事では脂肪吸引をおすすめする結果となっていますが、ご自身のライフスタイルや希望する結果などで判断は異なります。
クリニックの口コミや症例数などをたくさんチェックし、実際にクリニックへ足を運んで相談したり見積もりを出してもらったりしながら、ご自身にあった施術を検討してみてください。
監修
奥立 大樹
ミセルクリニック大阪梅田院院長
脂肪吸引や脂肪注入豊胸をはじめとする美容外科施術では、理想に近づけるだけでなく、体への負担を抑えることも大切です。仕上がりの美しさはもちろん、安全性や術後の回復にも配慮し、設計段階から一人ひとりと丁寧に向き合うよう心がけています。
美容医療は、外見の変化だけでなく、人生にも大きな影響を与えます。だからこそ、納得のうえで手術に臨んでいただきたいと考えています。後悔のない選択のため、医師としての信念を持って、分かりやすく正確な情報をお届けしています。